「お子さん、どうして幼稚園と違う場所に通っているの?」
そう聞かれるたびに、私は少しだけ息を止めます。
そして、こう答えるんです。
「発達がゆっくりで」
——「自閉症です」とは、言えないまま。
「発達ゆっくりです」は言える。「自閉症です」は言えない
息子が折れ線型自閉症と診断されて、5年以上が経ちました。
それだけの年月が経っても、私が自分から「自閉症です」と打ち明けている相手は、本当に信頼できる人か、家族か、同じような特性のお子さんを育てているご家族くらいです。
「発達ゆっくりです」は言えるのに。
「自閉症です」は、言えない。
言えない気持ちは、どこから来ているのか
自分でも考えました。この気持ちはどこから来ているんだろう、と。
ひとつは、相手の反応にいちいち振り回されるのが嫌だから。
「かわいそう」と思われるかもしれない。それなら、言わないほうがいい。
恥ずかしい、という気持ちも、正直に言えば、あります。
そして——普通のお子さんを育てている方が羨ましい。この気持ちは、今も変わりません。
時が経てば楽になる、わけではなかった
「そのうち受け入れられるようになるよ」と言う人もいます。
でも私の場合、羨ましさは時が経てば経つほど感じるようになりました。
仕事を辞めて、ABAにフルコミットして、それでも追いつかない。
そんなとき、近所の人に息子が小学校に入学した話をしたら、こう言われました。
「お母さん、楽になってよかったね」
——楽になった?
反論も何も、出てきませんでした。
ただ、私は努力している。楽だなんて、一度も思ったことはない。
ただただ、彼の人生を少しでも輝かせるために、好きなものが一個でも見つかるように、行動し続けているだけなんです。
「好きなもの」は、見つかったのか
見つかりました。
乗り物です。乗る方の。
ストライダーから始めて、補助輪付き自転車、そして補助輪なし。今では自分から「じてんしゃ」と言いに来ます。
これは、教えなければ——たぶん一生、好きになることはなかったと思います。
ABAで、分解して、少しずつ教えました。「またぐ」から始めて、2年かけて。
▶ そのときの記録 → 自閉症の子に自転車を教えた方法|ストライダーから乗れるまでの全手順
彼の「好き」は、待っていて自然に生えてきたものではなくて、一緒に耕して育てたものでした。
同じ気持ちのあなたへ
もしあなたが今、「自閉症です」と言えない自分を責めているなら、伝えたいことがあります。
言えなくて、いいと思います。
打ち明けることは義務ではありません。誰に、いつ、どこまで話すかは、親が決めていい。
「言えない自分は受容できていないんじゃないか」と思う必要もありません。私は5年経っても言えませんが、息子のためにやるべきことは、毎日やっています。受容と公表は、別のものです。
言えないまま、でも今日も彼の「好き」を一緒に探す。
それで十分、私たちは親をやれていると思うんです。
私が5年間積み上げてきた家庭療育はこちら
▶ ABA療育で伸びたこと・伸びなかったこと|5年間続けた母親の正直な記録
▶ 買ってよかった療育グッズ10選|わが家で実際に使ったものだけ
▶ 折れ線型自閉症に回復はある?5年以上向き合った母親の正直な答え
▶ 放課後等デイサービスの選び方|重度自閉症のわが家が「成長を期待しない」と決めた理由
この記事は、私自身の気持ちを正直に書いた記録です。同じ気持ちを抱えている方に、「一人じゃない」と伝わったら嬉しいです。


コメント