自閉症児への絵カードの使い方|「覚えたのに使えない」を越える般化の教え方

ABA・療育

【こんな方へ】
・単語は出たのに、その次が続かない
・私(ママ)にはやってくれるのに、他の人にはやらない
・カードでは言えるのに、実物や別の絵だと分からなくなる

この記事は、この3つに5年間ぶつかってきた母が書く「絵カードの教える順序」と「般化の壁の越え方」です。
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「絵カードでは言えるのに、本物のパンは指させない」

絵カードを使ったことのある親御さんなら、一度はこの壁にぶつかったことがあると思います。

カードでは正解できる。テストなら満点。なのに、食卓のパンを「パンどれ?」と聞くと、きょとんとしている。

覚えていないわけじゃないんです。「そのカードの絵」として覚えていて、「パンという概念」になっていない——これが般化の壁です。

息子と家庭ABAを5年やってきて、私が一番苦労したのがここでした。そして今週、わが家でその壁をひとつ越えた出来事があったので、絵カードの使い方の基本と一緒に、正直に書きます。

絵カードの使い方|3つのステップ

絵カードは「見せて言わせる」道具ではありません。順序があります。

ステップ1:マッチング(同じもの合わせ)

同じカードを2組用意して、「同じのはどれ?」と合わせる遊びから。言葉はまだ要りません。カードに慣れ、絵を見る力と、「同じ」が分かる力を作る段階です。

ステップ2:受容(聞いて選ぶ)

カードを2〜3枚並べて「パンはどれ?」。指させたら正解。言えなくても、分かっているかはここで確認できます。いきなり「言わせる」から始めると、親も子も苦しくなります。

ステップ3:表出(自分で言う)

カードを1枚見せて「これなに?」。一部でも言えたらたくさん褒める。完璧な発音は求めません。

それでも起きる「般化の壁」

この3ステップで覚えても、壁は来ます。わが家で今週、実際に起きたことです。

息子は市販の絵カードにお世話になってきました。物の名前は公文のカード、動作のことばは「ことばのテーブル」さんのカード。どちらも角がすり減るまで使いました。そこに、私が自作した新しい絵カードを見せたんです。

市販のカードならできる問題が、新しい絵ではできませんでした。

同じ「パン」なのに、絵が変わると分からない。5年やってきた私には見慣れた光景です。息子は「パンの概念」ではなく「あのカードの絵」で覚えていた。これが般化の壁です。

ここで大事なのは、これは失敗ではないということ。どの子にも起きる、学習の通り道です。問題は、ここからどう橋を架けるか。

橋の架け方|「同じのどれ?」から始める

私がやったのは、ステップ1に戻ることでした。

市販のパンのカードと、新しいパンのカードを並べて「同じのどれ?」。

言葉を聞く前に、「この2枚は同じ物だ」と気づいてもらう。マッチングは言葉が要らないぶん、一番やさしい橋です。

——通りました。

マッチングができた後に、2種類の絵を混ぜて「パンはどれ?」と聞くと、どちらの絵でも指せるようになったんです。絵柄を越えて「パン」がつながった瞬間でした。

違う絵でも同じ名前で答えられて、初めて「概念が身についた」と言えます。逆に言うと、絵カードは1種類だけで完結させない方がいい。市販のカードと自作カード、カードと写真、カードと実物——「同じ物のいろんな姿」を行き来させることが、そのまま般化の練習になります。

般化を進める4つの方向

  1. 絵を替える:別の絵柄のカードと混ぜる(今週のわが家はここ)
  2. 人を替える:「たべる」なら、いろんな人がたべている絵で聞く
  3. 実物につなげる:カードで言えたら、本物でも聞く
  4. 場面につなげる:食事のとき、お風呂のとき、その場で同じ質問をする

そして、うまくいかない日の合言葉はひとつ——できる問題を1回やって、「できた!」で終わる。嫌がったらやめる、ではなく、成功で締める。これが5年続いた理由だと思っています。

物の名前はできても、「人」は難しい

もうひとつ正直に。息子は物の名前の般化は進みましたが、「大人と子ども」「男の人と女の人」の区別はまだ難しいです。

物は形も色も全部違いますが、人はほぼ同じ形で、違いは細部だけ。しかも「大人/子ども」はカテゴリの概念なので、物の名前より何段も高度な課題です。できなくて当然のところで、わが家はいま、家族の写真とカードのマッチングから橋を架け始めています。

絵カードの練習は、テストではなく検品です。できない問題が見つかったら、それは「この子が次に学ぶ場所」が分かったということ。そこから2枚弁別に戻って、少しずつ。

お知らせ:この「般化のためのカード」を作りました

最後に少しだけ。今週の話に出てきた「自作カード」は、息子の般化の練習のために設計したものです——同じ4人の人物がいろんな動作をする動詞カードと、スマホ・タブレットなど「いまの暮らしの物」の名詞カード。

BOOTHで販売を始めました。この記事の考え方(マッチング→受容→表出、絵を替えて般化)を、そのまま形にしたカードです。

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▶ 発売の記事はこちら → 自閉症の息子のために作った絵カード、販売をはじめます

▶ 作った理由はこちら → 市販の絵カードにはスマホがなかった|公文カードに5年間お世話になった私が自作した理由

▶ 家庭ABA5年の記録 → ABA療育で伸びたこと・伸びなかったこと

▶ 般化に苦労した話 → ABA療育のデメリット|5年以上続けて感じた限界

※本記事は個人の体験に基づくものです。お子さんへの教え方は、特性に合わせて専門家にもご相談ください。

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