田中ビネーを5歳で受けた自閉症の息子|発達検査の前に知っておきたい5つのこと

自閉症と暮らし

「発達検査って、何をするんだろう」

検査の案内が届いてから当日まで、私はずっとそわそわしていました。何を聞かれるのか。泣かずに座っていられるのか。家で何か練習させた方がいいのか。

息子は5歳5か月のとき、児童相談所で田中ビネー知能検査を受けました。結果はIQ35。

この記事では、検査の問題そのものは書きません。これから受ける子の結果が正しく出るように、そこは守りたいからです。代わりに、検査の前の私が知りたかったことを5つ書きます。

1. 当日:泣きそうでも、座れれば始められる

  • 場所:児童相談所
  • 所要時間:45分
  • 親:隣に座っていられた。口は出さず、見ているだけ

初めての部屋で、息子は泣きそうになっていました。それでも、席には座れた。そして、最後まで座っていられました。

「泣いたらどうしよう」と心配していましたが、心理士さんはそういう子に慣れています。泣きそうなまま始まって、泣きそうなまま終わっても、検査はちゃんと進みます。

わが家が事前にしたことは、3つです。

  • 場所の写真を見せた:「ここに行くよ」を、先に目で見せておく
  • 好きなジュースを持って行った:がんばったあとのお楽しみ、兼、落ち着くための一本
  • 少し練習した:ネットで調べて、必要そうなことを少しだけ

正直に書くと、私も練習させました。「何もできなかったらどうしよう」という不安の方が大きかったんです。その話は、5つ目に続きます。

▶ 検査の日のことを詳しく → 自閉症の発達検査に付き添った日

2. どんな力を見るのか:「見て分かる」と「聞いて分かる」は別

検査は、机の上に道具や絵が出てきて、それに取り組んでいく形でした。問題の中身は書きませんが、ざっくり言うと、こんな力を見ていたと思います。

見る力たとえば
見て分かる力同じものを探す、形を作る、積む
聞いて分かる力言われたとおりに取る・置く
言葉で答える力名前を言う、働きを説明する、状況に合う行動を答える
数の力数える、「いくつ?」に答える
覚える力見たものの場所や順番を覚える

息子の場合、はっきり差が出たのは「見て分かる」と「聞いて分かる」でした。机の上に道具が出てくると、スムーズに取り組める。でも、先に説明を聞いて理解する必要がある課題になると、何をすればいいか分からなくなる。

同じ「色で分ける」でも、見て分かる形ならできて、耳だけで指示されるとできませんでした。

「できる・できない」ではなく、「どの条件ならできるか」。 検査を受けてみて、私が一番大きく受け取ったのはここです。

3. 親の答え方:「できる」の基準で、伝わる情報が変わる

息子は2回、発達検査を受けています。

1回目2回目
年齢2歳11か月5歳5か月
検査遠城寺式田中ビネー
結果DQ69IQ35

1回目は、親が質問に答える形の検査でした。そのころの私は、一度でもできたことなら「できます」と答えがちでした。

5歳のときは、ふだん安定してできることを基準に答えました。

数字だけ見ると、ずいぶん下がったように見えます。でも、この2つは同じ物差しで比べられる数字ではありません。検査の種類も、年齢も違う。息子自身の発達の変化もあるし、当日の調子もある。そして、親からの情報の伝わり方も違った。いくつもの要素が関係していると考えています。

その中で、親の私が変えられたのは、答え方だけでした。親が「できる」をどう判断して答えるかによって、検査者に伝わる情報は変わることがあります。

「できてほしい」気持ちが答えに入るのは、自然なことです。私もそうでした。でも、検査の結果は、療育や支援、学校の相談につながる資料にもなります。ふだんのその子の姿が伝わる方が、その子に合った支援を考えてもらいやすいと、いまは思っています。

4. 報告書は、数字より「所見」の文章を読む

検査のあと、報告書をもらいました。IQ35、精神年齢2歳8か月。その数字を見て、私はがっかりしました。

でも、何度も読み返したのは数字ではなく、その下の「所見」の文章です。

息子の報告書には、こう書いてありました。

視覚的な手掛かりがあると理解や行動が促されやすい

この一文が、そのまま家での関わり方の答えになりました。耳だけで伝えない。見せて伝える。 絵カードを続けてきたのも、この一文があったからです。

報告書をもらったら、数字の横ではなく、文章の中から「この子はどうすると分かりやすいか」を探してみてください。書いていなければ、心理士さんに「家で何に気をつければいいですか」と聞いてみる価値があります。

5. 練習するなら「答え」ではなく「力」

「検査の前に何か練習させた方がいいの?」——私も思いました。

検査の課題を練習すれば、その課題には答えやすくなると思います。私も検査の前は、ネットで調べて少し練習させました。

でも、検査を受けて、報告書を読んで、考えが変わりました。息子に必要だったのは、特定の問題の答えではなく、「見て分かる形で伝えてもらうこと」と、それを暮らしの中で使える力でした。

だから検査のあと、わが家は検査の課題を練習するより、暮らしの力を優先しています。トイレを自分から伝える。困ったときに、泣く以外の方法を増やす。検査を軽く見ているのではなく、何を練習するかを、家庭で選んだということです。

その中で続けてきたのが、暮らしの中で「対になる言葉」を体で教えることでした。

  • 水を触って「冷たいね」→ お湯に変えて「温かいね」
  • ジャングルジムの上で「高いね」→ 低い台の上で「低いね」
  • 大きい・小さいも、目の前の物で

やり方はシンプルです。

  1. 同じ場面で
  2. 2つを続けて体験させて
  3. その瞬間に、一言だけ言う

冷たいと温かいを、別の日に教えない。続けて触るから、違いが体で分かる。分かった瞬間に言葉をのせる。耳だけで教わるのが苦手な息子には、この形が届きやすいと、わが家では感じました。

私が育てたかったのは、検査の日に答えられる力ではなく、その後の暮らしで使える力でした。

▶ 絵カードで「分かる」を「使える」にする方法 → 絵カードの使い方|「覚えたのに使えない」を越える般化の教え方

検査を受けるお母さん、お父さんへ

検査の結果に、一喜一憂してしまう。その気持ちは、よく分かります。私もIQ35を見た日は、がっかりしました。

でも、検査がすべてではありません。

検査で分かるのは、あの日、あの部屋での45分です。その子の毎日は、そのあともずっと続いていきます。

大事なのは、その子の生活を、少しずつ豊かにしていくこと。トイレを自分から伝えられる。「お水ちょうだい」と言える。困ったときに、泣く以外の方法を使える。そういう力は、どの検査にも出てこないけれど、わが家の毎日を、確実に変えてきました。

検査は、その子を数字だけで測るためのものではなく、その子に合った関わり方を見つけるための地図だと、いまの私は思っています。

▶ 検査から1年、息子のいま → 折れ線型自閉症の予後|退行から5年

※本記事は個人の体験に基づくものです。検査の内容や進め方は、検査の種類・年齢・実施機関によって異なります。結果の解釈や支援については、検査を担当した専門家にご相談ください。

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