自閉症の発達検査に付き添った日|「できますか?」の答え方で数字が変わり、数字で支援が変わる

自閉症と暮らし

発達検査の日は、2回とも児童相談所でした。

1回目は2歳11か月、遠城寺式。結果はDQ69。
2回目は5歳5か月、田中ビネー。結果はIQ35。

今日は、その2日間に何があったか、親はどこにいて何を聞かれたか、そして——私が3歳のときに間違えた「答え方」の話です。

2回の検査、いつ・どこで・何を

1回目2回目
年齢2歳11か月5歳5か月
場所児童相談所児童相談所
検査遠城寺式乳幼児分析的発達検査田中ビネー知能検査
結果DQ69IQ35
主な目的療育手帳の判定手帳の更新・就学に向けて

遠城寺式は、親からの聞き取りが中心の検査です。「◯◯はできますか?」を項目ごとに聞かれ、それに親が答えます。田中ビネーは、子ども本人が心理士さんと課題に取り組む検査。積み木や絵カード、指示への反応を見ます。

同じ「発達検査」でも、1回目は親が答える検査、2回目は子どもがやる検査でした。ここが、この記事で一番伝えたいことにつながります。

当日の流れ|座れた。5歳のときは泣いた

どちらも、私と一緒に入室しました。

2歳11か月のときは、意外なほど落ち着いて座っていました。心理士さんの質問に私が答えている間、そばで遊んでいた記憶があります。

5歳5か月のとき。入り口で泣きました。部屋に入ることが怖かったのだと思います。それでも、席には座れた。泣いたまま、でも座れた。そこから課題が始まりました。

親は、隣にいました。5歳の検査は本人がやるものなので、私は口を出さず、隣で見ているだけ。途中で崩れたら支えるための「隣」でした。

「できますか?」に、私はどう答えたか

ここからが本題です。

3歳(2歳11か月)のとき:迷ったら「できる」と答えた

遠城寺式は親が答える検査です。「積み木を2つ積めますか?」「名前を呼ぶと振り向きますか?」——項目ごとに「はい」か「いいえ」。

私は、迷ったら「できる」と答えていました。1回でもできたと思ったことは「できる」。

心理士さんにも確認しました。「1回できたら『できる』でいいですか?」——「それでいいですよ」と言われました。だから、そのとおりに答えました。

結果はDQ69。「これなら追いつくかもしれない」と、私は期待しました。

5歳のとき:本当にできるものだけ「できる」と答えた

5歳の田中ビネーは本人がやる検査ですが、途中で親に聞かれる項目もあります。このとき私は、本当にできるもの以外は「できない」と答えました。たまたまできたもの、まだ定着していないものは「できない」に。

3歳のときとは、答え方を変えたんです。

結果はIQ35。「こんなに低いんだ」と、がっかりしました。

検査でどんなことをしたか(年長・田中ビネー)

「発達検査って、何をするの?」——受ける前、私が一番知りたかったことです。ただ、検査の問題そのものは、これから受ける子の結果が正しく出るように、ここには書きません。代わりに、どんな力を見る課題だったかと、ソラがどうだったかを、児童相談所からもらった報告書をもとに書いておきます。あくまで「わが家の1回」の記録です。

所要時間は45分。報告書には「1歳級の項目はすべて通過、4歳級の項目はすべて不通過」とありました。

どんな力を見る課題かソラ(5歳5か月)
目で見て取り組む課題(パズル・積木・同じ絵を探す など)スムーズ。見て分かると動ける
物や絵の名前を言う/名前を聞いて絵を指さす比較的スムーズ
「何に使うものか」「どんな特徴か」を聞かれて、合う絵を選ぶ答えられないことが多い
言葉の指示(物が1つ出てくる)応じられた
言葉の指示(物が2つ出てくる)理解が難しい
説明を聞いてから取り組む課題(色別に分ける など)何をするか分からず、誤答
数を数える/「いくつ?」に答える10以上数えられることもある。でも個数を聞かれて答えるのは難しい
物の働きを言葉で説明する/反対の言葉を答える/状況に合う行動を言葉で答える難しかった(オウム返しで終わることも)

報告書で一番大事だと思ったのは、この一文の中身です。「視覚的な手掛かりがあると、理解や行動が促されやすい」。机の上に道具が出てくると、ソラはスムーズに取り組めた。でも、同じように目で見る課題でも、先に説明を聞いて理解する必要があるものになると、何をすればいいか分からなくなった。

並べてみると、はっきりします。積木を実際に数えることはできる。でも「いくつありますか?」に数で答えられない。物の名前は言える。でも、それが何に使うものかを聞かれると答えられない。「知っている」と「質問されて答えられる」は、同じことではなかった。分からないというより、耳で聞いた質問に言葉で返すこと自体が難しくて、オウム返しになる場面もありました。

家での練習でも、同じことを感じていました。カードでは言えるのに、実物だと言えない。私が聞けば答えるのに、別の人が聞くと答えない。検査で目の前に並んだ「できた/できなかった」は、その差をそのまま映していました。これが、あとで「般化」を意識して練習するようになった、きっかけの一つです。▶ 絵カードの使い方|「覚えたのに使えない」を越える般化の教え方

車で帰った

2回とも、車で帰りました。

DQ69のときは、期待を抱えて。

IQ35のとき、運転しながら思ったのは「ここまでやったのに、この結果か」でした。2歳8か月から続けてきた家庭療育。毎日の積み重ね。それでも、35。

ただ、同時に分かってもいました。これは本当に、彼の成果だった。 いつもの彼の状態で、家でできていたことは、検査室でも全部やりきっていた。ごまかしも、まぐれも、体調の崩れもない。息子は、あの部屋で出せる全部を出した。

その全部が「35」と数字になる。これが、世間が息子を見る視点なんだ——それを初めて、数字で突きつけられた日でした。誇らしさと、悔しさが同時にあって、複雑でした。

でも今、振り返ると、がっかりした5歳の数字の方が、正しかった。

3歳のときも「本当にできるものだけ」と答えるべきだった

これが、この記事で一番言いたいことです。

DQ69とIQ35。この差は、5歳までの2年半で息子が「下がった」からではありません。検査の種類や方法が違うことに加えて、私自身の答え方も違いました。数字が変わった理由は、答え方だけではありません。検査そのものも違います。ただ、私の答え方が違ったことは確かでした。

1回できたことを「できる」と答えた3歳。定着しているものだけを「できる」と答えた5歳。

今振り返ると、3歳のときも、迷う項目は「できる」に寄せるのではなく、普段の様子やできる頻度をそのまま伝えればよかったと思っています。

そして、なぜそう思うようになったのか。数字は、支援や判断の参考になるからです。

療育手帳の判定や就学相談など、発達検査の結果が支援や判断の参考になる場面があります。支援の決まり方は制度や自治体によって違いますが、検査結果が実態を正しく伝えることは大切です。実態より高い結果になれば、必要な支援につながりにくくなる可能性もある。私の「迷ったらできる」は、息子の実態より少し高い数字を作ってしまったかもしれない。心理士さんが「それでいい」と言ったのは、検査の手続きとしては正しくても、支援の入口という意味では、親が考えるべきことでした。

「低く出す」のでもなく、「高く出す」のでもなく、今の本当を出す。それが、検査の日に親ができる一番大事なことだと思っています。

▶ 「できますか?」の答え方は、手帳の記事にも書きました → 療育手帳(愛の手帳)の判定は「できますか?」で変わる?
▶ 手当の判定にも数字が関わります → 特別児童扶養手当はいくら?金額・申請方法を体験談で解説
▶ 数字がどう就学に関わるか → 自閉症の就学相談レポ|通常級+支援を選んだ元教員ママが解説

元教員として|検査は「今の本当」を出す場所

教員だった頃、検査の数字だけを見て子どもを判断する場面を、私は好きではありませんでした。今もそうです。IQ35という数字は、ソラの全部ではありません。

でも、数字は支援の入口の一つです。だから、検査の日だけは、親の期待を横に置いて「今の本当」を出す。期待は、検査室の外で、毎日の療育で持てばいい。私はそう整理しています。

これから検査を受ける方へ

  • 親が答える検査では、迷う項目を「できる」に寄せず、普段の様子をそのまま伝える。「1回だけできました」「10回のうち2回くらいです」のように、頻度で伝えるのも一つの方法です
  • 判断に迷うときは、その場で心理士さんに確認して大丈夫です
  • 入室で泣いても大丈夫。泣いたまま座れれば検査はできます

私は3歳のとき、「できる」と答えることが息子のためだと思っていました。5歳のとき、数字にがっかりしながらも、初めて「これが今の息子なんだ」と思えました。

検査の日は、期待を大きく見せる日ではなく、今の姿をそのまま伝える日。それが、あの日を経験した私が今思うことです。

そして、検査のあとの帰り道が一番つらい日もあります。その日は、それでいいと思います。

▶ 就学の話の前に、園のこと → 自閉症児の幼稚園生活|「危険がある」と断られた年少から、加配の先生が泣いた年長の運動会まで

※本記事は個人の体験に基づくものです。検査の種類・判定基準・支援の内容は自治体によって異なります。お住まいの自治体・児童相談所にご確認ください。

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