市販の絵カードにはスマホがなかった|公文カードに5年間お世話になった私が自作した理由

使い込まれた絵カードとスマートフォンが並ぶ水彩イラスト|市販の絵カードにはスマホがなかった 自閉症と暮らし

療育グッズの箱の奥に、角がすり減った1枚のカードがあります。

くもんの「ぱんだ」のカード。息子が3歳の頃から、何百回めくったか分かりません。

くもんの絵カード「ぱんだ」の表面。角がすり減るまで使い込んだ1枚

くもんの絵カード「ぱんだ」の裏面。ひらがなと解説つき

今日は、このカードに心からお世話になった私が、それでも「自作カード」を作ることになった理由の話です。

公文のカードには、本当にお世話になった

息子の絵カードデビューは3歳。最初は本人の興味がある、動物と果物・野菜のカードからでした。

公文のカードの良さは、使い込んだ人ほど分かると思います。

  • 絵がリアル。おかげで息子は、リアルなパンダとクマをちゃんと区別できるようになりました(キャラクターものの丸い耳の動物は、いまだに大体「パンダ」と言いますが)
  • 厚手で大きくて見やすい
  • 角が丸くて危なくない。噛んでも、よだれで濡れても、少々なら平気
  • 裏にひらがなと解説がある。「これ何?」に親が答えられる

特に果物・野菜カードは、今あらためて全31枚を見直しても、ほぼ文句がありません。いちご、バナナ、トマト、にんじん——スーパーで見るものが過不足なく入っている。動物や果物は時代で変わらないから、昔のカードが今も現役です。これから絵カードを始める方には、今でも1集をおすすめします。

でも。

市販の絵カードでは足りなかった理由

生活道具カードの31枚を、いま並べてみます。

コップ、皿、スプーン。ここは完璧です。

でんわ、カメラ、こたつ。——ここで手が止まりました。

息子が毎日見ているのは、スマホです。

写真もスマホ。目覚ましもスマホ。カレンダーもスマホ。電話も、スマホ。

でも、絵カードにあったのは、受話器のついた「でんわ」でした。

「こたつ」は、わが家にも実家にもありません。

カードの中の暮らしと、息子の毎日が、少しずつずれていました。

誤解しないでほしいのですが、公文が悪いのではありません。動物や果物と違って、「道具」は時代で変わるんです。そして市販のカードは、そう頻繁には変われない。

息子が毎日見ているスマホ、タブレット、ドラム式の洗濯機。毎日使う泡のハンドソープ。息子の「いま、ここにある暮らし」のカードが、どこにも売っていませんでした。

絵カードを自作した理由

なければ作るしかありません。写真やフリー素材を集めて、1枚ずつカードにしました。

このとき、ひとつだけこだわったことがあります。

カードに文字を入れませんでした。

文字が入っていると、それが答えのヒント(ABAでは「プロンプト」と呼びます)になって、「絵を見て分かっているのか、文字で覚えているのか」が判断できなくなるからです。文字を読める子でも、課題の目的が「物の名前を理解しているか」なら、文字はヒントになります。

知りたいのは「絵だけで、それと分かるか」。だから絵カードは絵だけ。ひらがなと数字は、別に手書きのカードを作りました。

家庭でABAを5年続けて学んだことのひとつは、「1枚のカードで教えることは1つにする」でした。

家にあるものは、じっくり見る

自作カードを使っていて、気づいたことがあります。

息子は、家にあるものがカードで出てくると、じっくり見るんです。

いちばんよく見ていたのは、タブレットのカードでした。毎日使っている、紫のカバーのキッズタブレット。それがカードに出てくると、手を止めて、じっと見ていました。

カードの絵と、自分の暮らしがつながった瞬間だったのだと思います。写真ではなく、暮らしを覚えているんだ——そう思いました。

子どもは、図鑑の世界からではなく、自分の暮らしから言葉を覚えていく。当たり前のことに、カードを自作してやっと気づきました。

使い方も、息子の成長で変わりました。最初は数枚を並べて「りんごはどれ?」(分かるかの練習)。ことばが出てきた今は、1枚ずつめくって「これ何?」(言う練習)ができるようになってきています。同じカードが、成長に合わせて役割を変えてくれます。

その気づきを、教材にしました

あの頃の自作カードを、今回きちんと教材として形にしました。

スマホやタブレットなど、今の暮らしに合わせた名詞カードと、同じ家族が登場する動詞カードです。BOOTHで販売しています。

▶ まず試したい方へ → 無料お試し版(絵カード4枚+ことばカード4枚・0円) パン・コップ・たべる・のむの4枚を印刷して、お子さんに「絵として伝わるか」を確かめられます。

▶ 印刷せずにいますぐ試す → カードクイズ 無料お試し版(スマホで「パンはどれ?」)

▶ ショップはこちら → いまの暮らしの絵カード|水色デイズ(BOOTH)

▶ 発売の記事はこちら → 自閉症の息子のために作った絵カード、販売をはじめます

▶ 使い方と般化の教え方 → 自閉症児への絵カードの使い方|「覚えたのに使えない」を越える般化の教え方

今でも動物や果物のカードは、公文のカードを使っています。その隣に、「今の暮らし」を補うカードとして、この教材を作りました。

5年前、深夜にフリー素材を探していた私に教えてあげたいです。その手作りカード、いつか商品になるよ、と。

そして、あの頃の私のように「うちの子に合うカードがない」と感じている誰かの役に立てたら、それ以上にうれしいことはありません。

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※本記事は個人の体験に基づくものです。教材の使い方・効果には個人差があります。

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