「ママって呼ばれたい」だけで、私は治療を選んだ

窓越しの光の中で、母と子が手をつないでいる 幹細胞治療
「ママって呼ばれたい」── ただそれだけで治療を選んだ

「幹細胞治療、後悔した?」

そう聞かれると、今でも少し言葉に詰まります。

診察台で泣き叫ぶ息子を、私は必死に押さえていました。
そしてその時、自分の手が怖くなりました。

「後悔していない」と言い切るのは、少し違う気がしています。


診察台で、押さえつけている私の手が怖くなった

治療当日。
希望を持って、病院に向かいました。

ドキドキしながら診察台に乗せた息子は、最初は泣きませんでした。
「えらいね、頑張れるね」と心の中で声をかけていました。

でも、麻酔の前の点滴で、血管に何度も針が刺さらなかった。

押さえつけられて、息子が泣き叫ぶ。
尋常じゃない泣き方でした。

そりゃあ、痛いよね。

「でも、やらなきゃ」
「これは、息子のためなんだ」

頭ではわかっていました。
でも、押さえつけている自分の手のひらの感触が、ふと怖くなったんです。

私は今、何をしているんだろう。
誰のために、これを選んだんだろう。
私のため? 息子のため?

押さえつけながら、私自身が泣きたくなりました。

これでいいのか。
本当にこれで、合っているのか。

あの瞬間、私は確かに「後悔」に似た何かを感じていたと思います。


兄弟に「習い事はできない」と言った日

500万円。

──

振り込んだ瞬間より、もっと金額が重く感じた日があります。

それは、もう一人の子が「習い事をしたい」と言ってきた日でした。

「ごめんね、今は無理なんだ」

そう言うしかできなかった。
あなたの順番じゃない、と暗に伝えてしまった気がして、悔しかった。

500万円という数字が遠くで響くより、
「兄弟に我慢させてしまった」という事実のほうが、
ずっと近くにあって、ずっと痛かった。

幹細胞治療を選ぶというのは、こういうことなんだと、
その日にようやく、肌で知りました。


「成功しました」と聞いた瞬間、力が抜けた

「成功しました」

そう聞いた瞬間、全身の力が抜けました。

安心したのか、疲れたのか、自分でも分かりませんでした。

ただ、“もう戻れない” という感覚だけは、強く残っていました。


あの夜、夫と「早くお話ししたいね」と話した

家に戻って、夫と話しました。

「早く変化が見たいね」
「早く、お話ししたいね」

そう言い合いながら、私たちは少し笑っていた気がします。

不安の中にも希望があるって、こういうことなんだと思いました。

「お話ししたい」── これは、ずっと前から私の中にあった言葉です。
たぶん、治療を決めるよりも、ずっと前から。


それでも受けた本当の理由──「ママ」と呼ばれたかった

なぜ、500万円を払って、息子に痛い思いをさせて、兄弟に我慢させてまで、幹細胞治療を選んだのか。

正直に言うと、すごく論理的な理由があったわけじゃありません。

ただ、

ママって呼ばれたい。
もっと一緒にいると実感したい。
息子をもっと愛したい。

たぶん、それだけだったんだと思います。

機能を取り戻したかった、というより、
関係を取り戻したかったんです。

症状の改善というより、
もう一度、お互いを見つめ合える時間を取り戻したかった。

医療系の記事としては、たぶん変な動機かもしれません。
でも、これが本当のところでした。


後悔していないとは、言い切れない。それでも、選んでよかった

「後悔した?」

今、もう一度聞かれたら、私はこう答えると思います。

後悔した瞬間は、確かにありました。
怖かったし、お金で苦しかったし、兄弟に我慢させてしまった。
診察台で、自分の手のひらが怖くなった日もある。

でも、選んでよかった、とも思っています。

なぜなら、あの治療を選んだ私は、

「ママって呼ばれたい」

というシンプルな願いに、嘘をつかなかったから。

揺れがあるからこそ、本気で選んだ。
迷ったからこそ、覚悟が残った。


幹細胞治療を考えている誰かに、私は「絶対に受けるべき」とも「やめておくべき」とも言えません。

ただ、もし今、同じように揺れている親御さんがいるなら、

その迷いは、子どもを本気で考えている証拠なんだと思います。


次の記事で書こうと思っていること

あの時、「ママって呼ばれたい」と思った私が、
治療を決める前に、必死で試していたことがあります。

ABA、食事、腸活、サプリ、検査、睡眠──
診断が下りてから治療を選ぶまで、
家庭でできることはほぼ全部やってきました。

うまくいったこと、続かなかったこと、
お金をかけたのに効かなかったこと、
意外と効いたこと。

次の記事で、その全部を書こうと思います。

「幹細胞治療を受けるかどうか」を悩んでいる方にも、
そうでない方にも、
家庭でできる選択肢として参考になればと思っています。


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